新築には導入が必須「24時間換気システム」の仕組みと注意点

新築には導入が必須「24時間換気システム」の仕組みと注意点

新築を建てるにあたって、「換気システムをどうするか」といきなり聞かれても戸惑ってしまいますよね。「設備や電気代が掛かるなら、わざわざ付ける必要はないのに」と思った方も多いでしょう。

この記事では、新築戸建てを建てる際に必須と言われている、「24時間換気システム」について解説していきます。

「そもそもなぜ、24時間室内を換気をし続けなければいけないのか」また、「どのような仕組みで換気をするのか」「メンテナンスはどうすれば良いのか」など、詳しくご紹介していきます。

目次

「24時間換気システム」とはどんな仕組み?

では、まず24時間換気システムの仕組みと、導入が必須となっている理由について見ていきましょう。

有害物質や細菌から家族を守ってくれる

常に家の中の空気を換気し続けなければいけなくなった最大の理由。それは、建築技術の発達により「高気密」で「高断熱」な家が建てられるようになったことで、建材や家具に含まれる「ホルムアルデヒド」などの有害な物質や、結露によって発生したカビが室内にこもりやすくなったのが原因です。

なお、ホルムアルデヒドや室内にこもったカビは、シックハウス症候群を引き起こす原因だと言われています。

シックハウス症候群の症状

シックハウス症候群の典型的な例として、室内に入ると皮膚や目、喉などに痛みを感じる。全身がだるくなったり、めまいや頭痛がしたりするといった症状があります。
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大量の結露

室内に溜まった結露はカビを発生させ、シックハウス症候群の原因になる恐れがあります。

2003年以降「シックハウス症候群」が減少

実際、2003年に建築基準法が改正され、24時間換気システムが導入されるまでシックハウス症候群に関する相談件数は年々増加していました。
しかし、2003年をピークに相談件数は大幅に減少し、現在は横ばいの状況が続いています。
24時間換気システムは、私達をシックハウス症候群から守ってくれる強い味方といっても過言ではないようです。

シックハウス症候群の相談件数

シックハウス症候群関連の相談件数の推移

引用:2018年2月1日厚生労働省(生活衛生関係技術担当者研修会)資料

また、近年では有害な物質を含む建材を使うこと自体が制限される傾向にあり、健康に配慮した家づくりに対する取り組みが引き続き行われています。

換気のポイントは「給気」と「排気」

では、続いて24時間換気システムの仕組みを見ていきましょう。24時間換気システムはキッチンやお風呂場の換気扇とは違い、なるべく温度変化を起こさずにゆっくり空気を入れ替えてくれるのが特徴です。目安としては、およそ1時間で家の中の半分の空気が入れ替わります。

24時間換気システムの設置例

24時間換気システムの設置例

引用:大型台風通過時の24時間換気口は閉めてOK!ただし条件付き|株式会社さくら事務所

また、室内に空気を取り込む「給気」と、空気を外に送り出す「排気」の仕様によって、換気システムは以下の3種類に分けられます。

第1種換気方式|温度変化を抑えて快適さを重視

外の空気は室内の空気と比べて温度差があります。そのため、そのまま外気を取り込むと室内の温度が下がったり、上がったりしてせっかくの空調の効果が台無しになってしまう恐れがあります。
そこで、外の空気を室内の温度に近づけてから取り込むことで、温度変化を限りなく少なくしているのが「第1種換気方式」です。

第1種換気方式

引用:24時間換気システム 戸建住宅用|Panasonic

排気口から送り出す空気の温度を測ることで室内の温度を把握し、その情報をもとに、給気口で取り込んだ空気を室内と同じ温度にしてから取り込みます。これにより、室内の温度が一定に保たれるわけです。
ただし、給気口と排気口の両方を換気扇やファンで管理するので、設備費や電気代などのランニングコストが多く掛かってしまうのが難点です。

第2種換気方式|空気の鮮度を保つ

「第1種換気方式」が給気と排気の両方を機械で管理しているのに対して、「給気」のみを換気扇やファンで行い、排気は機械を使わず自然に押し出されるような形で空気を排出するのが「第2種換気方式」です。

第2種換気方式

引用:24時間換気システム 戸建住宅用|Panasonic

常に新鮮な空気を取り込めるのが魅力ですが、室内に結露が溜まりやすくなる欠点があるため、一般的な木造の家にはあまり使われておらず、無菌室やクリーンルームなどの限られた設備で導入されるケースが多いようです。

第3種換気方式|低コストで実用的

「第2種換気方式」とは逆に、「排気」のみを機械で管理する換気方式です。特に、高気密で高断熱な現代の家に適しており排気を行うことで自動的に給気口から新しい空気を取り込むことができます。

第3種換気方式

引用:24時間換気システム 戸建住宅用|Panasonic

最も普及している換気システムで、「第1種換気方式」に比べて設備費やランニングコストが抑えられるのも特徴です。

本当に24時間付けてなくちゃいけないの?

換気システムで上手く換気ができることは分かったけど、「ずっと換気をしていたら冬は寒いんじゃないの?」「つけっぱなしは電気代の負担が気になるから嫌だ」とお考えになった方も多いでしょう。
果たして、換気システムは本当に24時間つけておかなければいけないのでしょうか。

カビを防ぐには「湿気」が大敵

結論からいうと、絶対に付けておかなければいけないとは言い切れません。なぜなら、換気システムの中には、台風など雨風が強い時には湿気が入って来ないようにするため、一時的に換気システムを止めることを推奨している場合があるからです。

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とはいえ、これはあくまで水漏れなどで大量の湿気が入ってくるのを防ぐためです。結局、換気が十分に出来ていない家には結露が溜まってカビが発生しやすくなります。特別な場合を除いて、基本的に換気システムは24時間つけたままにしておきましょう。

外気を室温に近づける「第1種換気方式」

しかし、「換気システムをつけると家の中が寒くなる」といった悩みでお困りの方は少なくありません。なので、「どうしても換気システムをつけたままにしておくのが不安」という方や、これから換気システムをお選びになる方は、先程ご紹介した換気システムのうち、「第1種換気方式」の導入を検討してみてください。

外の空気を室内の温度に近づけてから取り込む「第1種換気方式」なら、室内の温度変化を最小限に留めることができるはずです。

コストを抑えるなら「第3種換気方式」一択?

また、「つけっぱなしで電気代が掛かるのは避けたい」とお考えの方も多いと思います。そういった方は、少ない電気代で安定して換気ができる「第3種換気方式」を検討してみてください。

一般的に換気システムの電気代だけを見ると、「第1種換気方式」は月あたり、数百円から多いときで3,000円近く掛かりますが、「第3種換気方式」は1/2以下で、基本的に数百円程度で済ませることができます。

ただし、エアコンなどの空調設備のランニングコストを含めて考えると、「第1種換気方式」の方が割り安になる場合がある、と紹介しているサイトもあります。どの換気システムを導入するか検討する際は、必要な設備費や月々のコストなどを比較して慎重に決める必要がありそうです。

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点検の目安とお手入れの方法について

「24時間換気システム」を導入するにあたって、忘れてはいけないのが定期的なメンテナンスです。十分なメンテナンスを怠ったために、「ファンから異音がするようになった」「換気システムがうるさくて眠れない」といった悩みでお困りの方もいます。

最低でも1年に1回は点検してほしい

ちなみに、環境によって汚れ易さが違うので、点検する目安はお家によって異なりますが、およそ2ヶ月から1年に1回といわれています。
お手入れの方法は主に、フィルターの交換溜まったホコリの除去です。

特に、フィルターが目詰まりを起こして給気不足になっていると異音が発生しやすくなるので、フィルターは定期的に交換をしてあげてください。

フィルターの中には黄砂や花粉を取り除けるものもあります。ショッピングサイトやホームセンターでも取り扱いがあるので、ご自身にあったものを選んでみてください。

MEMO

換気システムの点検を一度もせず3年間放置した結果、フィルターが真っ黒になっていたというケースもあります。換気システムが十分に機能せず、汚れた空気が室内に溜まっていたなんて考えたくもないですよね。ご利用の際はご注意ください。
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設置箇所とお手入れの方法は事前に確認

しかしながら、新築戸建てのように床面積が大きい家では、換気システムを複数箇所に設置しなければなりません。加えて、場所によっては点検や取り外しが難しい場合もあります。換気システムを導入する際は、メンテナンスのしやすさも視野に入れて検討してみましょう。

換気システムの設置のイメージ

換気システムの導入イメージ

引用:お部屋の換気は大丈夫!?「24時間換気システムの仕組み・効能」|アルファジャーナル

特に、ハウスダストや建材の薬品に敏感な方がご家庭に居る場合は、定期的なメンテナンスが必要になるかもしれません。24時間休まず働き続けてくれる換気システムだからこそ、安心して長く使えるように手入れしてあげましょう。

新築に伴う24時間換気システムについてのまとめ

この記事では「24時間換気システム」について、義務付けられた経緯や換気の仕組み、お手入れの方法などについてご紹介しました。「24時間換気システム」についてあまりご存知なかった方も、これから導入を検討される方も、活用されるイメージができたのではないでしょうか。

ぜひ、ご自宅の換気システムでお困りの際は、またこの記事を参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

「現場を100棟以上見てきた宅建士が、地に足のついた情報をお届けします。」

宅地建物取引士(東京都知事(1)第112158号)。総合建材商社で100棟以上の現場管理を経験し、建築の流れや各工程のリアルを熟知している。その後、不動産事業部を一から立ち上げ、土地・建物の売買や登記、ローンといった不動産実務にも精通。建て替えは「建築」と「不動産」両方の知識が求められる複雑なテーマ。間取りや設備の選び方から、資金計画、税金、名義変更まで、幅広い疑問に対して現場経験と不動産実務の両面からお答えします。

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