プレハブ工法の新築は珍しくない|メリットとデメリットの両面を紹介

新築の7戸に1戸はプレハブ住宅です。

プレハブ住宅に対して、「簡素な造りで建てられた家」といったイメージをお持ちの方は少なくないでしょう。
仮設住宅そのものを「プレハブ」と呼ぶことが、世の中に浸透しているからだと考えられます。

ですが、実は普通の家のなかにもプレハブ住宅に当てはまる建物はたくさんあります。統計によると、日本の新築の7戸に1戸はプレハブ住宅に該当します。つまり、世間一般の認識とプレハブ住宅の定義との間にはギャップがあるといえます。

では、プレハブ住宅とは本当のところ、どのような建物なのでしょうか?プレハブ住宅の新築を建てると、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

この記事では、プレハブ住宅を深掘りするとともに、プレハブ住宅を新築することのメリット・デメリットについてお話しいたします。

目次

プレハブ住宅とはプレハブ工法で建てられた家

プレハブはプレファブリケーション(prefabrication)の略称です。「pre」は「事前」、「fabrication」は「製造」を表します。

なので、プレハブ工法というと「事前にプレカット工場で建材などの加工を終わらせておく工法」を意味します。事前に規格通りの建材を造っておく「見込み生産」を行い、注文が入ったら現場に建材を持ち込んで組み立てる工法です。

そして、このプレハブ工法で建てた家のことを「プレハブ住宅」、または単に「プレハブ」と呼ぶようになりました。

プレハブ住宅といえば、災害発生時に建てられる仮設住宅のイメージが強いかもしれません。
ですが、実際には普通の新築のなかにもプレハブ住宅に当たるものは数多くあります。

ミサワホーム「CENTURY Primore3」

ミサワホームの木質系プレハブ住宅。
外見だけで工法を見抜くのは困難です。

引用:ミサワホーム|CENTURY Primore3

統計データでは、日本の新築の7戸に1戸がプレハブ住宅であることが示されています。

全住宅に占めるプレハブ住宅の割合の推移

全住宅に占めるプレハブ住宅の割合について、10年間の推移を示すデータ。

引用:一般社団法人プレハブ建築協会|プレハブ建築の現状

ちなみに、プレハブ工法は建物の構造によって4系統に分かれます。

代表的なハウスメーカー
ユニット系 セキスイハイム
木質系 ミサワホーム、積水ハウス、住友林業、住友不動産、ヤマダホームズ
鉄鋼系 旭化成ホームズ、トヨタホーム、パナソニックホームズ、サンヨーホームズ
コンクリート系 大成建設ハウジング

※鉄骨フレームや木材パネルで構成される。

上表の通り、高級住宅のイメージが強い旭化成ホームズ(ヘーベルハウス)などもプレハブ工法を用いています。
ミサワホームに至っては、実は木質系プレハブ住宅のパイオニア的存在だったという歴史があります。

このように、一部の大手ハウスメーカーもプレハブ工法で新築を建てています。

プレハブ工法で新築する3つのメリット

プレハブがもたらす効率化

一部の大手ハウスメーカーがプレハブ工法を使って新築するのには理由があります。
規模の大きい会社ほど、プレハブ工法の恩恵が大きくなりやすいからです。

プレハブ工法の恩恵とは、工場生産による効率化がもたらすメリットのことを指します。
効率化のメリットは、企業のみならずユーザーも受けられるのが特徴です。

そこで、プレハブ工法で新築する主なメリットを3点ご紹介いたします。

【メリット1】コストに貢献する

コストに関する効率化

プレハブ工法で新築する場合、すべての建材を一から用意する必要はありません。
建材の規格を決めておけば、同じ建材を一度にまとめて生産し、保管しておけるからです。

まとめて生産すれば、機械の稼働準備といったムダな作業が減り、そのぶん生産効率が上がります。
そのため、プレハブ工法を用いるとコスト面でメリットがあります。

【メリット2】工期が短くなる

工期に関する効率化

工業化が進む前は、新築1棟ごと、使う部位ごとに一つずつ建材を加工していました。
大工さんが手作業で加工していたため、大変な時間が掛かっていたと考えられます。

しかし、プレハブ工法を使えば現場での作業を減らすことができます。
プレカット工場で建材を加工するからです。

現場での作業が減れば、作業時間が短縮されて工期は短くなります。
したがって、プレハブ工法を使うと工期を短くできるのがメリットです。

【メリット3】品質が均一になる

品質に関する効率化

建材の加工を職人さんが手作業で行う場合、品質のバラつきをゼロにすることはできません。
職人さんの間には技術の差があるからです。
また、同じ職人さんが加工した建材でも、作業時の疲労具合や集中力によって品質が変わることもありえます。

ですが、プレハブ工法は主に機械で建材の加工を行うため、建材の品質が安定しています。
さらには、規格品を一定の方法で組み立てるので、品質に影響を及ぼすような作業が通常の工法よりも少なくてすみます。

人の手に頼る部分が減れば、品質にバラつきが生じる可能性は低くなります。
このように、建材の加工や組み立てについて、品質が均一になるメリットがプレハブ工法にはあります。

プレハブ工法で新築する3つのデメリット

プレハブがもたらす制約

本来、新築はご家族ごとに細かく調整しながら建てるべきものです。
特に昨今はライフスタイルが多様化しているため、なおさら新築にご家族の希望を取り入れる必要性が増しています。

しかし、プレハブ工法で新築する場合は、どうしても制約が生じます。
プレハブ工法は、規格という制約に従って新築する工法だからです。

つまり、プレハブ工法は制約と引き換えに効率化を実現しているといえます。
メリットとデメリットが裏表の関係だということです。

ですので、プレハブ工法で新築を建てるデメリットについても3点お伝えいたします。

【デメリット1】設計の自由度が下がる

設計に関する制約

プレハブ工法では、建築会社から提示されるプランに沿って新築の設計を決めていきます。
規格品の建材を組み合わせて実現できる範囲でしか、基本的に対応できないからです。
自由に設計するのが難しいため、デザインや間取りを細かく決めたい方には不向きかもしれません。

また、土地の特徴を活かした設計もあまり望めません。
狭い土地や形の整っていない土地などでは、柔軟性に欠けるというデメリットが強く出てしまいます。

そのため、既存のプランで満足できて、四角の土地に新築を建てる方にプレハブ工法は向いているといえます。

【デメリット2】施工中に計画を変更しづらい

施工に関する制約

プレハブ工法を使う職人さんは、規格品の組み立て作業に特化する傾向があります。
職人さんの手作業を減らして効率化を図ったことで、職人さん個人が大工の技術を磨く場面が少なくなったためです。
ですから、プレハブ工法の職人さんは、一般的に急な計画変更に対応するのが得意ではありません。

もし計画を変更できたとしても、今度は費用が上がったり品質が下がったりする恐れが生じます。
規格から外れることで、先に挙げたメリットを失ってしまう可能性が高いからです。

したがって、プレハブ工法では事前の打ち合わせが特に重要となります。
施工が始まったら、計画変更は基本的に不可能だと考えておきましょう。

【デメリット3】間取り変更のリフォームが困難

リフォームに関する制約

プレハブ工法で建てられる新築は、建築基準法の上では「特別に認められた住宅」という扱いをされます。
普通の新築と比べて、リフォームの際に強い制約が掛かる場合があります。

たとえば、間取りの変更が容易にできません。
新築時の設計、つまり行政に申請して特別に認められていた設計から変わってしまうためです。

かといって、新築後10年、20年と経って子どもが独り立ちしたりすれば、リフォームをしたくなるのも無理はありません。

プレハブ工法でも、あらかじめリフォームを想定した造りにしておくことはできます。
なので、新築計画を立てる際に、将来のリフォームについても相談しておきましょう。

あわせて読みたい
e-Gov 法令検索 電子政府の総合窓口(e-Gov)。法令(憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則)の内容を検索して提供します。

新築をプレハブ工法で建てる時のメリットとデメリットのまとめ

この記事では、プレハブ住宅を深掘りするとともに、プレハブ住宅を新築することのメリット・デメリットについてお話しいたしました。

仮設住宅などは、プレハブ工法で建てられた建物の一部に過ぎません。
一見普通に見える新築も、プレハブ工法で建てられている場合があります。

ちなみに、プレハブ工法にはメリットとデメリットの両面が存在します。
プレハブ工法を使った新築を検討していらっしゃる方は、よく確認しておきましょう。

メリット デメリット
・コストに貢献する
・工期が短くなる
・品質が均一になる
・設計の自由度が下がる
・施工中に計画を変更しづらい
・間取り変更のリフォームが困難

なお、コスト重視で新築で建てたい場合、以下の記事が参考になります。ぜひご一読ください。

あわせて読みたい
1000万円以下で新築を建てよう|コツと注意点を3つずつご紹介 「賃貸住宅から抜け出したい」 資金的な壁があると分かっていても、将来のことを考えると新築に移り住みたいと考える方は少なくないでしょう。 新築を1000万円以下で建...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

「現場を100棟以上見てきた宅建士が、地に足のついた情報をお届けします。」

宅地建物取引士(東京都知事(1)第112158号)。総合建材商社で100棟以上の現場管理を経験し、建築の流れや各工程のリアルを熟知している。その後、不動産事業部を一から立ち上げ、土地・建物の売買や登記、ローンといった不動産実務にも精通。建て替えは「建築」と「不動産」両方の知識が求められる複雑なテーマ。間取りや設備の選び方から、資金計画、税金、名義変更まで、幅広い疑問に対して現場経験と不動産実務の両面からお答えします。

目次