地主さんとの信頼関係が大切…建て替え承諾料を支払うべき理由とは

借地上の建物を建て替えるには、基本的に地主さんの承諾を得なければなりません。もし、無断で建て替えると地主さんとの信頼関係が損なわれるばかりか、借地契約を解除されてしまう危険すらあります。

なお、建て替えについて地主さんに承諾してもらうためには、建て替え承諾料を支払うのが一般的です。そこで、本記事では建て替え承諾料を支払うべき理由と、建て替え承諾料の算出方法について解説します。

目次

なぜ建て替え承諾料を支払う必要があるのか?

地主さんの承諾を得るためには、建て替え承諾料の支払いが欠かせません。しかし、借地上の建物を建て替えるだけなのに、なぜ建て替え承諾料を支払う必要があるのでしょうか?

まずは、建て替え承諾料の意義や支払うべき理由について説明します。

建て替え承諾料は地主に損させないために支払う

実は、すでに借地契約を結んでいる状態であっても、借地は借主の自由に使えるわけではありません。

なぜなら、借地借家法が存在するので、借地上における建物の有無や種類が借地契約そのものにも大きな影響を及ぼすからです。

借地借家法とは?

土地や建物の貸し借りにおいて、主に借り手を保護するための法律です。
民法の規定だけでは借主が地主より弱い立場に置かれやすいので、借地借家法でカバーしています。

借地上に建物が存在する状態で、借主が借地の契約更新を請求すると、地主は正当事由がない限り請求を拒否できなくなります。(借地借家法 第5条)

正当事由とは?

借地権や借家権の更新を拒否すべき根拠を指します。
例えば、「自分が居住するため」「生活資金を得るため」など、必要に迫られているのが明らかな場合が正当事由に該当します。
しかし、正当事由が十分あるとはいえないケースでも、立退(たちのき)料を支払えば契約更新を拒絶できる可能性はあります。(ただし、高額になりやすい)

さらに、いったん建て替えを承諾してしまうと、借地権の期間が承諾や再建築された日から20年に延長されるといった問題もあります。(残存期間が20年未満の場合。借地借家法 第7条)

つまり、半永久的に土地が返ってこない事態になりかねないので、地主にとっては安易に建て替えの承諾ができないのです。

そのため、地主さんから承諾をもらう代わりに、建て替え承諾料を支払う必要があります。地主さんの損失を建て替え承諾料によって穴埋めし、地主さんに納得してもらうわけです。

建て替え承諾料の支払いは実質的に義務?

本来、建て替え承諾料の支払いは義務ではありません。しかし、地主さんも損はしたくないはずなので、一般的には地主さんが建て替え承諾料を受け取らずに建て替えを承諾することは考えられません。

ですから、建て替え承諾料の支払いは実質的に必須といえます。なお、地主に通知をせず無断で建て替える行為は、契約違反に当たる危険があります。

賃貸借の契約に増改築禁止特約が付けられていて、勝手に建て替えできない場合が多いからです。特に、契約更新を1回以上済ませている場合は気を付けなければなりません。

無断の建て替えを理由とすれば、土地の賃貸借契約を地主から一方的に解約できるからです。(借地借家法 第8条)

ただ、地主さんと協議しても折り合いがつかず、どうしても建て替えを承諾してもらえないケースもあります。その場合は、裁判所に対して地主の承諾に代わる許可を求められます。

建て替えによる明確な不利益が地主側に存在しない場合、裁判所から建て替えの許可がもらえる可能性があります。

なお、裁判所が建て替えの許可を出す場合でも、借主は地主に対して建て替え承諾料を支払うのが一般的です。(借地借家法 第17条)

このように、裁判所に建て替えの許可を求めるケースでは、建て替え承諾料の支払いを命じられる可能性があります。

つまり、法律においても、「建て替えの承諾による地主の損失は、建て替え承諾料によって穴埋めすべき」と考えられているのです。

注意

建て替え承諾料を支払って承諾を得たときは、必ず書面を交わしましょう。既存建物を解体してから地主に「承諾していない」といわれたら、建て替えができなくなってしまうためです。なお、書面に決まりはありませんので、以下に見本を示します。

※法定耐用年数は以下の通り。

  • 軽量鉄骨プレハブ造(肉厚3mm以下)⇒19年
  • 木造⇒22年
  • 軽量鉄骨プレハブ造(肉厚3~4mm)⇒27年
  • 重量鉄骨造(肉厚4mm以上)⇒34年
  • 鉄筋コンクリート造⇒47年

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建て替え承諾料はいくら払えば良いのか?

すでにお話しした通り、建て替え承諾料の支払いは義務ではないので、金額は定まっていません。そこで、借主と地主双方が納得できるように、目安から建て替え承諾料の金額を決めるのが一般的です。

建て替え承諾料の目安を知ろう

建物は、非堅固(ひけんご)建物堅固(けんご)建物で区別されます。

非堅固建物・堅固建物とは?

非堅固建物とは、木造などの建物を指します。
一方、堅固建物は、鉄筋コンクリート造など頑丈に造られた建物を意味します。

建て替え承諾料は更地価格を基準として算出しますが、上記の非堅固建物か堅固建物かによって計算式に用いる数字が異なります。

建て替え承諾料の目安

非堅固建物 更地価格×約3%(2~5%)
堅固建物 更地価格×約10%(8~12%)
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なお、更地価格は「公示価格×土地面積」で算出します。

公示価格とは?

国の機関が公表している土地の価格です。民間の土地取引においては、公示価格を価格の指標とします。なお、各地域で設定されている公示価格については、国土交通省のサイトにて確認ができます。


引用元:国土交通省|国土交通省地価公示・都道府県地価調査

また、更地価格にかけるパーセンテージについては、個々の状況に応じて増減させます。もし、「更新料を支払っている」「設定されている地代が高い」等の事情があれば、パーセンテージを低めに設定する、といった具合です。

注意

非堅固建物から堅固建物に建て替える場合は、建て替え承諾料ではなく借地条件変更承諾料を支払う必要があります(借地借家法 第17条)
借地条件変更承諾料は、更地価格の10%が目安です。

実際に計算してみよう

では、以下の数字を使って、計算方法を確認しましょう。

  • 公示価格:250,000円/㎡
  • 土地面積:150㎡
  • 建物の種類:木造(非堅固建物なので、建て替え承諾料は更地価格の3%)

まず、公示価格に土地面積をかけて更地価格を算出します。


250,000円/㎡×150㎡=37,500,000円(更地価格)

更地価格が3,750万円と判明しました。続いて、更地価格に3%(非堅固建物)をかけ、建て替え承諾料を計算してください。


37,500,000円×3%=1,125,000円(建て替え承諾料の目安)

上記例の場合、目安となる建て替え承諾料は112万5千円だと分かりました。なお、繰り返しになりますが、上記の更地価格にかける数字「3%」は一般的な目安に過ぎません。実際は、契約状況等に応じて、個別にパーセンテージを増減させる必要があります。

建て替え承諾料についてのまとめ

今回は、建て替え承諾料を支払うべき理由と、建て替え承諾料の算出方法について説明しました。

借地上の建物を建て替えると、地主さんに不利益が生じる可能性があります。そのため、地主さんに納得してもらうために、建て替え承諾料を支払う必要があります。

建て替え承諾料の目安は、非堅固建物の建て替えで3%、堅固建物の建て替えなら10%程度です。ただし、契約状況などに応じて、双方に損が生じないようにパーセンテージを増減させる必要があります。

また、建て替え工事に入る前には、建て替えの承諾について地主さんと書面を交わしましょう。なお、もし建て替えにかかる出費を抑えたいなら、建て替え承諾料よりも建て替え工事費用に着目すべきです。

工事費用は金額が大きい分、値引きできたときの効果が大きいからです。特に、解体費用は業者さんによって価格差が大きいので、複数社から見積書を取得するのが一般的です。

株式会社コノイエでは、優良な解体業者を無料で複数紹介しており、業者間の価格比較で無理なく解体費用を節約できます。どうぞご利用ください。

借地上の建物を建て替えるためには、地主さんとの協力・信頼関係が不可欠です。建て替え承諾料については「もったいない」なんて思わずに、「これからもよろしくお願いします」と気持ちを込めて支払うのが良いかもしれませんね。

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この記事を書いた人

「現場を100棟以上見てきた宅建士が、地に足のついた情報をお届けします。」

宅地建物取引士(東京都知事(1)第112158号)。総合建材商社で100棟以上の現場管理を経験し、建築の流れや各工程のリアルを熟知している。その後、不動産事業部を一から立ち上げ、土地・建物の売買や登記、ローンといった不動産実務にも精通。建て替えは「建築」と「不動産」両方の知識が求められる複雑なテーマ。間取りや設備の選び方から、資金計画、税金、名義変更まで、幅広い疑問に対して現場経験と不動産実務の両面からお答えします。

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